ただいま鉄道写真スキャン中

昭和40年代中半の国鉄時代から、21世紀初頭のJR時代までの鉄道写真をご紹介。当時のことやら思い付いたことなどをとりとめなく記しました。

台湾のキューロク

江別の鐵様の画像につき、転載はご遠慮ください。

台湾を日本が統治していた時代の大正から昭和初期にかけて、日本の車輛メーカーは鉄道車輛の増産に次ぐ増産で、台湾総督府鉄道部からの機関車発注を受けることができませんでした。そこで台湾総督府鉄道部はアメリカのアルコ社に9600形式の製造を依頼し、こうして完成したのがアメリカ製キューロクのE600形式でした。(後にD96形式に改称されたものの、機番は変更されず。)戦後、台湾総督府鉄道部は、台湾国営の台湾鉄路管理局へ移譲され、その時、形式はDT560形式に変更されました。

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平成25(2013)年1月3日 苗栗(びょうりつ:ミャオリー)

 

DT560形式DT561号機←D96形式600号機←E600形式600号機

大正9(1920)年製造

民国60(1971)年廃車

DT560形式は14輌が製造されました。(DT560~DT574←E600~E613(ナンバープレートは「E」省略))基本設計は日本の図面を元にしていますが、随所にアメリカナイズされているディテールが確認できます。

1.煙室下部から前方に伸びるブレース

2.煙室前端周辺部のボルト

3.細い煙突

4.主蒸気管からシリンダー周りの形状

といったところがすぐに分かるポイントでしょうか。

他に国産キューロクとの相違点はといえば、1軸固定・2軸ボギー台車の炭水車、一直線のキャブ裾、砂箱と蒸気ドームの位置関係(一部の機関車)、キャブ下ステップの廃止、棒台枠、広い火格子などが挙げられます。とかくアメリカ製蒸機は作りが粗いと批判されますが、このアメリカ製キューロクは国産キューロクよりも性能がよく、評判はよかったそうです。

 

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平成27(2015)年1月3日 打狗(だく)鉄道故事館(現 旧打狗鉄道故事館)

 

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平成28(2016)年5月22日 打狗(だく)鉄道故事館(現 旧打狗鉄道故事館)

DT580形式DT609号機←D98形式828号機←E800形式828号機

昭和4(1929)年製造(汽車会社)

民国68(1979)年廃車

そしてこちらが日本製の台湾向けキューロクになります。ほぼ国鉄形そのものですが、前照灯と小振りのカウキャッチャーのような排障器が独特の雰囲気を醸し出しています。39輌が製造されました。(DT581~DT618←E800E830、E832~E838;E831は戦災により廃車され、DT580としての機番なし)

 

因みに形式の「D」は日本と同じ動輪軸数を表し、「T」はテンダ機関車を示します。動態保存されている台湾のC12は「CK120」ですが「K」はタンク機関車を示します(Tankのk)。統治時代の形式である「E」の意味は分かりませんが、ウィキなどを見ると「E」が端折られています。しかし、車輛メーカーの資料などにはしっかり「E」が付いています。

 

この場所は屏東(へいとう:ピンドン)線の起点である高雄港駅(貨物駅)の跡地で、打狗(たかお)駅として開業しました。詳しくはウィキで。

旧打狗駅故事館 - Wikipedia

 

台湾は、どこぞの超汚染国家とは180度違って極めて親日的であり、日本統治時代の建造物やインフラなどを大切にしてきました。鉄道についても、今でこそ近代化を目指して複線化、高架化、電化を進めていますが、それまでは統治時代の古い駅舎がそのまま使われ(廃止後も保存されています)、昭和の日本の香りを漂わせていました。それがたまたま訪れた江別の鐵様の琴線を思いっきり弾いてしまい、それ以来10年以上も毎年通い続けております。

文化的には中国大陸の影響が大きく(漢民族出身者が多いせいもあるでしょう)、宗教や家屋の造り、料理の味付、犬の種類は日本とはだいぶ様相が異なります。勤勉な人が多い印象で、英語を喋る人はゴロゴロいますし、ぼったくるタクシーの運転手などに遭ったことはありません(江別の鐵様体験談)。駅員もおおむねファンには好意的で、無料で荷物を預かってくれたりお茶を出してくれたこともあります。言葉は通じなくても身振り手振り、漢字の使用で何となく通じてしまいます。

本物の先進国家だけあって鉄道ファンもそれなりにいて、日本製のカメラで撮影を楽しむ姿を見かけます。もっとも、現地の人かと思って「ニーハオ」と声を掛けたら日本人だったということも少なくなく、やはり日本人のファンの方が多いようではあります。こんな自由な国が中国共産党の餌食にならないように、日本は台湾との関係を大切にしなくてはいけませんね。