ただいま鉄道写真スキャン中

昭和40年代中半の国鉄時代から、21世紀初頭のJR時代までの鉄道写真をご紹介。当時のことやら思い付いたことなどをとりとめなく記しました。

赤平も雪だった

月が顔を出したり雲の陰に隠れたり、目まぐるしく変わる天候下の夜の赤平。
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滝川駅の待合室で仮眠を取ったお蔭で、幾分頭もすっきりしたようです。風邪気味だった体調も回復したような。
風景写真を撮るほどの余裕ですが、列車が来るまでには余裕ありすぎ。

赤平に到着したのは定刻の21時46分。録音目的の列車通過時刻は0時15分ころ。
駅前は雪一面の銀世界。街灯に照らされたその光景は息をのむほど美しく見えました。駅待合室の中は暖かいけれど、そこでじっと時を待つのは勿体と思い、さっさと目的地である踏切へと向かうことにします。その道には、先導してくれるかのように一筋の足跡が先へと続いています。途中で一人とすれ違い、急に現実世界へ引き戻されたような残念感を覚えます。僕だけしかいない世界をちょっとだけ堪能させて。

前回この踏切に来たのは7月13日のこと。その日の写真の出来はタリラリランながらも、撮影した上り列車のブラスト音が、空知川の橋梁を通り過ぎたあとも長い時間に渡り聞こえてきて、何だかとても心地良かったのが心にずっと残っていて、ならば夜だったらさらにもっと響いてくれるだろうと期待をしてこの日を迎えたわけです。

かなり早めではあるけれどマイクをセットして、あとは夜の雪景色と目まぐるしく変わる天候を身に沁みるほどに味わいます。

列車が通過するまであと1時間か・・・などと時計を確認したまさにその時、幌岡信号場の方から汽笛が聞こえました。おっと、レックレック。滝川駅で職員の人に確認した時には、録音ターゲットである5787列車しか運転されないということでしたが、これは単5781列車です。単機であろうと蒸機にはちげーね。儲けた。
けれどちょっと不安が残ります。単機とはいえ、橋梁を渡る音くらいはするのではなかろうか。でもその音がちっとも聞こえませんでした。

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赤平→幌岡信号場 5787列車 D51 緩急車の後部標識灯
待ちに待った定刻、赤平駅を発車した列車は、足元を確かめるかのようにひとつひとつのブラストを歯切れよく響かせながらゆっくりとゆっくりと近づいてきます。踏切を通過して、いよいよクライマックスとなる橋上の通過音に耳を澄ませます。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
放送事故か?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
途中で停車した?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
おいおい、なんも聞こえないべさ!

先ほどの単機と同じく、どうも雪に音を吸収されたようです。がちょ~ん。野望ついえし。とどめは録音そのものも、レベルが小さくてほとんど聞こえません。大失敗です。

ところで、列車番号が奇数なので下り列車ッぽいのですが、ちゃんと上り列車です。逆に下り列車なのに5780という列車は上りのような番号です。実はこの2本の列車は留萌とを結ぶ列車で、滝川駅で進行方向が変わります。函館本線を基準で見れば、上下と番号は一致しています。平成の今は小樽~札幌間で快速「エアポート」が千歳線基準なので、同様の逆転現象が起きていますね。

いささか残念でやるせない気持ちではありますが、終わってしまったことを嘆いても始まりません。赤平駅に戻ると、下り「からまつ」の改札が始まるところでした。それを撮影しようなどとはツユにも思わず、椅子に座って見守るだけです。列車が発車すると待合室の灯りは消され、暗くなった中、また一人ポツンと僕だけの世界を満喫です。外では大粒の雪が舞い降りてきました。とにかく一仕事を終えたんだし、外に出て、駅から少し離れた自販機で滅多に飲まないコカ・コーラを買ってきます。なんせ貧乏人なので、撮影先で切符以外の買い物は一切しません。駅務室でお湯をもらってカップヌードルをすするファンを何度羨ましいと思ったことでしょう。まあ、そんな侘しい思い出もいつかは愛おしくなるさね。ここは雑念をスカッと呑み込んで爽やかにと参りましょう。

上り「からまつ」滝川到着3時52分。駅構内は雪に覆われていました。キンと空気が締まり、もはや真冬の様相です。そんな中、気を引き締めて、いよいよ今回の撮影行、最後の仕上げとなります。10月に撮影した2列車の撮影に再度挑戦します。

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5495列車 D51 561

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5481列車 49648
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同上

D51の5481列車は、ピンボケかまして停車中の写真は全滅でした。
49648の5481列車ではピンボケは免れましたが、もう少し撮りようがあったのではないかと不完全燃焼です。でも、見送った光景は心にしっかり焼き付いており、赤平での残念な記憶とともに今では大切な宝です。

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急行「大雪5号」 ED76
4時46分、空席の目立つ「大雪5号」に乗車し、帰宅します。

すさまじいショックで目が覚めると札幌駅に到着でした。夜明け前の薄暗い空が広がっています。けれど蒸気機関車にはまもなく永遠の帳が下ろされようとしています。

昭和50(1975)年11月23~24日