ただいま鉄道写真スキャン中

昭和40年代中半の国鉄時代から、21世紀初頭のJR時代までの鉄道写真をご紹介。当時のことやら思い付いたことなどをとりとめなく記しました。

C56 160試運転開始

C56 160はいよいよ、実際に旧客を牽いての試運転が始まりました。最初の撮影をどこにしようかと考えて、まだ降り立ったことのない張碓駅に決めました。停車があったからです。停車があるということは発車があるわけで、発車時の煙を拝めると期待したからですが、でも考えることは一緒で、50人以上が張碓駅に集まりました。

イメージ 1
下り普通列車通過
この頃はまだ、中央に待避線がありました。駅員もおりました。駅前は海水浴場でもありました。

イメージ 2
上り貨物列車
カメラマンはほぼ全員ホームから降りて線路際でカメラを構えています。上り線側と下り線側の二手に分かれており、私は上り線側におります。理由は単純で、人数が少なかったからです。対向列車があれば撃沈ですが、ダイヤを見る限りそんなことはなさそうです。ホームに残った人は、邪魔にならない位置に収まったようです。

当然、デンスケもお供しており、一番上の写真の気動車が通過する前からテープを回しっぱなしにしております。この日は奮発してメタルテープを使いました。

和気あいあいと穏やかながらも高揚した声で鉄ちゃん同士の会話が収録されています。
「そこのオジサン、前に出ちゃだめだよ」
「お~そうか、ここなら大丈夫だべ」
怒り狂う輩は一人もいません。

北海道警察のヘリコプターがバタバタと上空を旋回し、
「SL列車は予定通り運行されています。カメラで写真を撮られる方は線路上に出ないようにお願いします」とアナウンス。やるな、道警。
と思う間もなく、すでに列車はトンネルから顔を出しており、しずしずとホームに横付けしました。
イメージ 3
駅員が列車の到着を迎えます。

イメージ 4
試乗会なのかマスコミなのか、乗客が降りてきました。
「なんだあれ‼❓」カメラマンから落胆の声が漏れてきますが、「どけっ!」などと怒鳴り散らす人は一人もいません。
「もう発車するから早く乗ってね」
そんな声に笑い声が漏れます。
ここでフィルムが切れてしまいました。すぐに別のカメラを出してカラーポジで撮影を続けようと思ったら、残りあとわずか。げげ。フィルムを交換している時間もなさそうなので、発車時の煙の上がった時を狙うことにします。

定刻、発車ベルに続き野太い汽笛が張碓の海辺に鳴り響き、天高く吹き上げられた煙が、断崖迫る狭い空を覆いました。発車時に1枚だけシャッターを切った後は、小気味よいブラストが胸の鼓動とシンクロし、もう見られないと思っていた蒸機列車を夢見心地で見送りました。

その後の記憶は飛んでいるのですが、返しの上り列車は手稲銭函の間で狙うことにしました。どこから乗ったのかは分かりませんが、多分、国鉄バスを使って移動したのだと思います。

イメージ 5
下り普通列車

イメージ 6
飾り気のない姿で現れた試運転列車。まともなカットはこれだけ。
録音を聞くと、見学に訪れた子供たちの歓声が収録されています。列車は秋枯れの原野を快調に走り去って行きました。
上2枚の写真の間には北海鋼業が建っているので、場所はほしみ駅付近かと思われます。

その日の夕方のニュースでは、この試運転列車のことが報じられ、翌日以降の撮影に益々意欲を掻き立てられるのでありました。

昭和55(1980)年11月16日

張碓駅発車時の音をアップしたので、興味のある方はダウンロードしてお聞きください。22日までの限定になります。

http://8.gigafile.nu/0422-b9bb74047a4457a32c64a0bbd53a2979d