親切にも叩き起こされて時計を見るとまだ朝の5時前。ここは東京駅の玄関前。ゆうべ、あれほどいた人たちの姿は全くなく、自分一人だけが残されておりました。
前日は予定を変えて撮影はなし。新宿駅西口の黄色いビルで買い物をしただけで、都内での撮影すらしておりません。
そしてこの日、せっかく早起きさせてもらったので、早い時間の電車で鎌倉を目指します。目指すは江ノ電こと、江ノ島鎌倉観光。
でも撮影場所はよく分からないし、分からなくても有名な鉄道だから、知る人が見れば分かると思うので、キャプションはほとんどナシで、一気に写真を羅列します。
当時、「俺たちの朝」という青春ドラマが放映されていて、その舞台となったのが江ノ電の「極楽寺駅」近辺でした。オッス(勝野洋)、チュー(小倉一郎)、カーコ(長谷直美)の3人の若者それぞれが、自分の夢を叶えるために苦労や挫折を味わいながら、そして時に友情や愛情に触れながら、悩みもがき生きる姿を描いた作品です。そのヒロインである長谷直美が好きで、彼女がドラマで触れた空気感を自分も感じてみたいということで、鉄に絡めてやってきたわけですが、極楽寺駅前に集まってキャッキャしている若者たちを見てしまうと「自分は違うんだ」と急に姿勢を正し、それからは純粋な鉄に徹することに致した次第でございます。
最近では、中井貴一と小泉今日子が共演するドラマでも、極楽寺駅付近が舞台になりましたね。
江ノ電の車両は形式も多く、趣味的には実に面白いのですが、身近ではないせいか、写真を撮った時点で「もういいや」と、軽いノリで終わってしまいました。
特にSASのファンでもなかったので江の島や湘南海岸への思いもありませんでしたし、鎌倉の大仏を遠目に見ただけでお昼過ぎには横須賀線に乗車しておりました。
で、やって来たのは常磐線の取手駅。関東鉄道常総線の始発駅です。駅からほど近い場所で撮影しました。
常総線の取手駅を常磐線のホームから。御多分に漏れず、40年後の今はすっかり様子が変わっているのでしょうね。
すでに夕刻を迎えていましたが、ここから更にふたつ先の佐貫駅へ移動します。ここも関東鉄道で、竜ケ崎線の始発駅です。
モノクロフィルムはここで終わり、この後はコダクロームに詰め替えてバルブ撮影を致しました。江ノ電にエネルギーの大半を消費してしまったので、関東鉄道は惰性のような撮影でした。関東鉄道の残り「筑波線」と「鉾田線」は翌日に持ち越しです。
昭和52(1977)年8月21日