ただいま鉄道写真スキャン中

昭和40年代中半の国鉄時代から、21世紀初頭のJR時代までの鉄道写真をご紹介。当時のことやら思い付いたことなどをとりとめなく記しました。

HDCAM

「HDCAM」って言われても、ビデオに興味のない人にとっては「なんじゃそれ?」ってなりますよね。それはSONYが開発したハイビジョン映像のフォーマットの一つで、昔ながらにテープ記録を行っておりました。放送局では標準的なフォーマットで、編集デッキではアナログのベータカム系の再生にも対応し、映像資産を有効に活用できた点は非常に評価できると思います。今やファイル形式で記録し、ディスクを使用する機材すら珍しくなり、メモリーカード記録が主流ですね。そんな今であっても、いまだにHDCAMを使用している局だかプロダクションがあるとかないとか。テープ記録の信頼性からだと思います。でも、民生用のテープ記録(VHS、8mm、DV、HDV)の信頼性はイマイチイマニで、経年劣化は驚くほどお盛んです。
しかし局仕様だけあって、HDCAM機材のお値段は高級車並み、個人が手を出せるような代物ではありません。本格的な編集環境を整えるなら、家一軒分のお金が必要になります。電気だってバカ食いです。重さで床が抜けちゃうかも。
今はファイル形式になったお陰で、高性能なPCとキャプチャ環境さえあれば、再生機材こそ必要ですが、個人でも何とか編集可能になっています。

そんな超高価なカメラで、とあるプロダクションから「撮影して欲しい」という依頼を受けて、HDCAMで初めて撮ったのが次の画像。
イメージ 1

イメージ 2
自分が所有していた業務用ベータカムのカメラをぶっ壊してから何年も経っていたので、当時の感触をすっかり忘れておりました。業務用機の長所は、機種が異なっても使い方はほぼ統一されているということ。思い出せば問題ありません。
でもこの時は、ファインダーの明るさを調整するのをすっかり忘れて、めっちゃ明るい状態のファインダーで、ゼブラも出さずに露出を合わせたので、みんな露出不足になってしまいました。基本を無視するとロクなことにはなりません。
でもまあ、編集上での補正は可能なので、それを静止画レベルで行うとこんな感じになり、まあ、そこそこに。
イメージ 3

イメージ 4
多分、だいぶ粒状性は荒れているでしょうが、使えなくもなし。
列車が動態ブレを起こしているのは、ビデオ撮影ではシャッター速度の標準は1/60だからです。個人的には1/180~1/250を好んで使うのですが、この時には依頼主の希望に沿って1/60です。

依頼主では予算の関係上、レンズはベータカムで使用していたSD用です。つまりハイビジョン用ではありません。それでも100万円単位の価格です。そのせいかどうか分かりませんが、フォーカスがうまく合わないことが度々ありました。特に望遠領域が厳しかったです。しばらくしてからHDレンズを導入しましたが、やはりキレが随分と違うようでした。

この静止画は、HDCAMオリジナルではなく、HDVにコピーしたものです。ウチではHDCAMのデッキなんぞ持ち合わせておりませんから、HDVにコピーしたテープを譲り受けました。その分、圧縮ノイズなどが乗って画質を損ねています。HDVはハイビジョンの家庭用フォーマットで、これもテープ記録です。デジタルビデオであるDVテープに記録できたのはありがたかったけれども、ドロップアウトが発生すると最小で15フレームがすっ飛んだのは悲しかった、そんなフォーマットです。今やもう、撮影では過去のフォーマットになりつつあります。
解像度はHDCAMもHDVも1440×1080ですが、レンズやカメラの性能の違いで、HDCAMはシャッキリ、クッキリしており、フルハイビジョン並みです。またCCDなので、動態歪みが発生しません。コンニャク現象が起きたり、走る列車が斜めったりはしません。

イメージ 5
カメラと一緒に借りたグレースケールでホワイトバランスを取ったはずなのに、色合いがチト妙な感じがします。少々、グリーンに転んでいるように見えます。
イメージ 6
補正!
イメージ 7
局用のカメラは重いのです。三脚もガッシリしていて重いのです。
西の里信号場では、踏切付近に車を置いて、数百メートル機材を担いで歩いただけですっかり疲れました。いつのニュースだったか、HDCAMでエベレスト登山を記録したとTVで報じていました。並の人間には絶対に真似はできません。カメラの運用重量だけで10kg近くはあるでしょう。登るだけでも大変なのに。

イメージ 8
DF200-901はこの頃はまだ健在。
イメージ 9
補正!
イメージ 10
三脚にも全然慣れていないので、カメラを振ることなく専らフィックス撮影です。ズーミングするにも、リングの粘りが適当でないと、スムーズに手動で動かせません。このレンズはちょっと固めで、自分の感覚には合いませんでした。この辺り、慣れの問題なのですが、数日間での撮影なので、慣れるには時間が足りなかったので、確実に撮るにはフィックスが適当なのです。電動では途中はスムーズな動きですが、開始と終わりで唐突に動き出すので、どうにも好きになれません。「じわっ」とした感じが欲しいのです。その感覚は車のブレーキと同じでしょうか。ふわっと踏む力を抜く感じ。

ビデオに興味のない人にはどうでもいい話でしたが、今やビデオと写真の境界が曖昧になりつつあります。どちらかと云うと、ビデオ映像が動く写真になりつつあり、機材は写真機がビデオカメラに近づいています。8Kでは秒間120フレームにもなりますから、もうこうなるとスムーズに動く写真といっていいかもしれません。

平成19(2007)年9月14日